暴力犯罪
突然、暴力事件で逮捕された、あるいは逮捕されそうな状況に直面した―。そんな事態に遭遇した方やそのご家族は、強い不安や焦りを感じているのではないでしょうか。
しかし重要なのは「逮捕=有罪」ではないという事実です。このページでは暴力事件における被疑者・被告人の権利と、弁護士による具体的な支援や当事務所の対応方針について、詳しくご説明します。
暴力事件で逮捕されても「=有罪」ではない
日本国憲法は「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する」(第37条第1項)と定めています。また、「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する」(同条第2項)とも規定しています。
つまり、暴力事件で逮捕されたとしても、被疑者・被告人には十分な防御権が保障されているのです。ここでは、特に重要な3つの権利について詳しく説明します。
無罪推定の原則とは
疑わしきは被告人の利益に」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは「無罪推定の原則」を表す法諺です。刑事裁判では、被告人が有罪であることの証明責任は検察官側にあり、有罪の確信を得られない場合は無罪となります。
この原則は以下のような重要な意味を持ちます。
- 逮捕されても「有罪が確定している」わけではない
- 検察官が「合理的な疑いを超える証明」をしない限り、無罪となる
- 被告人には自身の無罪を証明する義務はない
実務上、この原則は非常に重要です。例えば、防犯カメラの映像が不鮮明で犯人と被告人の同一性に疑いが残る場合や、正当防衛の可能性が完全には否定できない場合などには、無罪判決が出されることもあります。
黙秘権の重要性
憲法第38条第1項は「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」と定めています。これが「黙秘権」です。警察官や検察官からの取り調べに対して、黙秘を貫く権利が保障されているのです。
黙秘権が重要である理由は次の通りです。
- 取り調べの緊張から事実と異なる供述をしてしまうことを防げる
- 弁護士と相談する時間を確保できる
- 証拠の内容を確認してから供述するかどうかを判断できる
- 自身に不利益な供述を強要されない
ただし黙秘権の行使には弁護士の判断が必要です。どの段階で、どの質問に対して黙秘するかは、事案の内容や証拠関係を踏まえて慎重に判断する必要があります。
弁護人選任権の意味
憲法第34条は、「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない」と定めています。これは、逮捕された瞬間から弁護士に依頼できる権利が保障されていることを意味します。
弁護人選任権の具体的な内容は以下の通りです。
- 逮捕直後から弁護士に依頼できる
- 弁護士との接見は原則として制限されない
- 弁護士と秘密のやり取りができる(秘密交通権)
特に重要なのは「秘密交通権」です。警察官や検察官に内容を聞かれることなく、弁護士と相談できる権利が保障されています。この権利を活用することで、より適切な防御方法を検討することが可能となります。
暴力事件における弁護士の役割
暴力事件の弁護において、弁護士の最も重要な役割は「依頼者の権利を守ること」です。これは単に示談交渉を行うだけではありません。依頼者の言い分に真摯に耳を傾け、証拠を精査した上で、最適な弁護方針を決定し実行していきます。
依頼者の言い分を丁寧に聴く
刑事弁護において、まず重要なのは依頼者の話に丁寧に耳を傾けることです。警察の取調べでは、警察官の観点から事実を確認していくため、依頼者が言いたいことを十分に話せない場合があります。
弁護士との接見では以下の点を詳しく確認します。
- 事件の発生状況
- 目撃者の有無
- 防犯カメラの設置状況
- 正当防衛の可能性
- その他の違法性阻却事由の有無
このような詳細な聞き取りを通じて、依頼者の置かれている状況を正確に把握し、最適な弁護方針を検討していきます。
証拠の精査と弁護方針の決定
弁護士は、検察官から開示された証拠を徹底的に精査します。単に証拠の内容を確認するだけでは不十分です。
例えば、被害者や目撃者の供述調書を読む際には、供述の一貫性や客観的証拠との整合性を慎重に確認していきます。「なぜその場所にいたのか」「どのような視点で目撃したのか」「供述内容は時系列的に矛盾していないか」―。こうした観点から、供述の信用性を丁寧に検討していきます。
また、防犯カメラの映像証拠については、単に映っている内容だけでなく、以下のような技術的な観点からの分析も重要です。
- 撮影時の照明条件や天候
- カメラの設置角度と死角の有無
- 被写体との距離と映像の鮮明度
- 撮影時刻の正確性
特に重要なのは、証拠として提出されていないものの分析です。「なぜこの目撃者の供述調書がないのか」「現場に防犯カメラがあったはずだが、なぜその映像が証拠として提出されていないのか」。こうした証拠の欠落にも、重要な意味が隠されている可能性があります。
この分析結果と依頼者の言い分を総合的に検討し、以下のような弁護方針を決定します。
- 無罪を主張して争う
- 正当防衛を主張する
- 違法収集証拠の排除を求める
- 情状の余地を探る
無罪を勝ち取るための弁護活動
「無罪推定の原則」は、刑事裁判の大原則です。検察官には「合理的な疑いを超える証明」が求められ、そこに僅かでも疑いが残れば、被告人は無罪となります。この原則を踏まえ、弁護人は様々な角度から無罪立証のための活動を行います。
- アリバイの立証
- 目撃証言の信用性を崩す反対尋問
- 防犯カメラ映像の鑑定
- 独自の証拠収集
- 正当防衛を裏付ける証拠の収集
特に重要なのは「合理的な疑い」の定義です。最高裁判所は「健全な社会常識に照らして、疑いを差し挟む余地のない程度の確信」を求めています。弁護士は、この基準に照らして、検察官の立証の不十分さを明らかにしていきます。
示談による解決
示談は、刑事手続の中で重要な意味を持ちます。しかし、ここで注意しなければならないのは、示談は必ずしも「罪を認めて謝罪する」ということを意味するわけではないという点です。
示談には、様々な意義があります。例えば、正当防衛の可能性がある事案では、示談交渉の過程で事実関係を正確に確認し、相互の認識の違いを解消できることがあります。「殴られそうになって防衛的に手を出した」という事案で、被害者が「一方的に殴られた」と思い込んでいるような場合、示談交渉の場でその誤解を解くことができるのです。
また示談は民事上の紛争も含めた早期解決の手段ともなります。刑事事件が起きた場合、その背後には多くの場合、民事上の争いが存在します。示談を通じてこれらの問題を一括して解決することで、その後の紛争の蒸し返しを防ぐことができます。
ただし、示談交渉は慎重に進める必要があります。特に、以下のような点に注意が必要です。
- 示談の時期(早すぎる示談は却って不利に働く可能性もある)
- 示談金の適正な金額設定
- 示談書の作成(法的効力のある適切な内容とする)
- 示談が成立しなかった場合も見据えた示談交渉
刑事弁護の流れ
刑事事件では、特に初動の48時間が極めて重要です。この時期にどのような対応ができるかによって、その後の展開が大きく変わってきます。ここでは、刑事弁護の具体的な流れについて、時系列に沿って説明していきます。
逮捕から48時間以内の重要な対応
逮捕直後の48時間は、弁護活動の中で最も重要な時期と言えます。この期間に、検察官は警察から事件の送致を受け、さらなる身柄拘束(勾留)を請求するかどうかを判断します。
弁護人は、この段階で以下のような重要な活動を行います。まず逮捕の法的要件が充足されているかを確認します。警察による逮捕には、逮捕状の呈示や弁護人選任権の告知など、様々な手続要件が定められています。これらが適切に履践されていない場合、違法な逮捕として争うことができます。
またこの段階での取調べ対応も極めて重要です。弁護人は接見を通じて、取調べの状況を詳しく確認します。不当な追及や誘導がないか、適切な休憩が与えられているか、取調べ時間は適正かーー。必要に応じて、取調べの時間制限や立会いを要請することもあります。
証拠収集と反証準備
48時間以内の証拠収集活動は、その後の弁護活動の成否を左右します。なぜなら、この時期に散逸してしまう証拠が数多く存在するからです。
例えば、事件現場周辺の防犯カメラ映像は、通常1-2週間程度で上書きされてしまいます。目撃者の記憶も、時間の経過とともに曖昧になっていきます。現場の状況も、天候や人の出入りによって刻々と変化していきます。
そのため弁護人は、可能な限り早期に以下のような証拠収集活動を行います。
- 防犯カメラ映像の保全要請
- 現場の写真撮影と実地検証
- 目撃者からの事情聴取
- アリバイ立証のための資料収集
こうして収集した証拠は、検察官の立証に対する反証の準備として、慎重に分析・検討していきます。
弁護方針に基づく具体的な活動
収集した証拠の分析結果を踏まえ、具体的な弁護活動を展開していきます。この段階では、事案の内容に応じて、以下のような様々な選択肢が考えられます。
無罪を主張して争う場合はアリバイの立証や、正当防衛の主張のための証拠収集を本格的に進めます。目撃証言の信用性を争う場合は、現場の実地検証を行い、本当にその距離や条件で目撃が可能だったのかを科学的に検証します。
また違法な捜査手続が認められる場合は、裁判において証拠排除の申立てを検討します。令状なしの捜索や、過度に長時間の取調べなど、捜査機関による違法な手続があった場合、そこで得られた証拠の証拠能力を争うことができます。
このように、48時間以内の対応から始まり、証拠の収集・分析、そして具体的な弁護活動の展開まで、刑事弁護は様々な段階を経て進んでいきます。各段階で適切な判断と対応を行うことが、依頼者の権利を守る上で極めて重要となります。
刑事事件専門の弁護士への依頼がおすすめの理由
刑事事件、特に暴力事件の弁護では、一般の民事事件とは全く異なる知識と経験が必要となります。なぜなら、刑事手続には民事訴訟にない特有の原則や証拠法則が存在し、その理解と運用には高度な専門性が求められるからです。
豊富な刑事弁護の経験
刑事事件を専門にする弁護士は、日々、刑事事件の弁護活動に携わっています。この日常的な実務経験は、民事事件を業務の中心とする弁護士とは一線を画するものですし、依頼者の権利を守る上で極めて重要な意味を持ちます。
例えば、取調べの場面一つを取っても、そこには様々な専門的な判断が必要となります。供述調書の作成過程で、どのような誘導や追及が行われる可能性があるのか。それに対してどのように対応すべきか。最新の実務傾向はどのようなものなのか。こうした判断には、豊富な実務経験に基づく知見が不可欠です。
また刑事事件の実績豊富なの弁護士は、捜査機関の動きを予測する能力も備えています。「この段階で、捜査機関はどのような証拠を持っているはずか」「次にどのような捜査が行われる可能性があるか」。こうした予測に基づいて、先手を打った対応を取ることができます。
証拠評価の専門性
証拠に対する見方や事件を見通す力は、刑事弁護の核心部分と言えます。刑事事件の経験が豊富な弁護士は、長年の経験を通じて、証拠評価のスキルを磨いています。
一つの供述調書を読む際にも、様々な観点からの分析が必要です。その供述は、取調べのどの段階で、どのような状況下で得られたものなのか。供述の変遷はないか。もしあるとすれば、それはなぜか。こうした分析には、取調べの実務に関する深い理解が必要不可欠です。
科学的証拠の評価においても深い知見が重要となります。DNA型鑑定や指紋鑑定などの科学的証拠は、一見すると動かぬ証拠のように見えます。しかし、その前提条件や解析手法、結果の解釈には様々な議論の余地があり、それらを理解した上で証拠価値を適切に評価する必要があります。
24時間365日の対応体制
刑事事件は、いつ発生するか予測できません。特に暴力事件の場合、事件発生から逮捕、そして取調べまでの流れは極めて早いものとなります。このような状況下では、弁護士の迅速な対応が決定的に重要となります。
深夜であっても、刑事事件専門の弁護士は直ちに警察署への出動が可能です。なぜなら、逮捕直後の対応が、その後の事件の展開を大きく左右するからです。特に、被疑者が初めて取調べを受ける前に弁護士と相談できるかどうかは、極めて重要な意味を持ちます。
また、証拠の保全という観点からも、迅速な対応は不可欠です。事件現場の状況は時々刻々と変化していきます。防犯カメラの映像は上書きされ、目撃者の記憶は薄れていきます。速やかに現場に赴き、必要な証拠を収集・保全することで、より充実した弁護活動が可能となるのです。
暴力事件の際は弁護士への早期相談が重要
暴力事件で逮捕されてしまった場合でも有罪に直結するわけではありません。しかし起訴され有罪判決を受けてしまうと、前科がついて社会復帰が困難になるだけでなく、多大な社会的制裁を受けることになりかねません。そのため暴力事件の対応においては、「初動の段階でいかに適切な弁護活動ができるか」が極めて重要な意味を持ちます。
暴力事件の疑いをかけられたり、逮捕されたりした場合は、一刻も早く暴力事件に強い弁護士に相談することが重要です。弁護士が迅速に介入し、示談交渉や情状弁護などを行うことで、不起訴処分や執行猶予判決を獲得できる可能性が格段に高まります。
JIN国際刑事法律事務所の弁護士は、豊富な経験と深い知識を活かし、依頼者の権利を守るため、24時間体制で全力を尽くします。
「自分は本当は悪くない」「正当な理由があった」―。そのような思いをお持ちの方は、一人で悩まず、まずは相談してください。私たちが、あなたの言葉に真摯に耳を傾け、最適な解決策を見出すためのサポートをいたします。
暴力犯罪に当てはまるもの
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人を殴って怪我をさせた(傷害罪)
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殴った人が亡くなった(傷害致死罪)
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人を殺した(殺人罪)
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物を壊した(器物損壊罪)
暴力犯罪の弁護ならJIN国際刑事法律事務所にお任せください
相手方の生命・身体・財産などにダメージを与えてしまうのが暴力犯罪です。被害者が明らかなことが多いので、認める事件であれば速やかに示談をすることが重要です。否認する事件であれば、専門家と連携するなどして不起訴や無罪を目指す弁護戦略を立てていく必要があります。
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刑事事件専門事務所ならではの圧倒的な経験値とノウハウ
当事務所は、刑事事件のみを扱う日本でも数少ない刑事事件専門法律事務所です。 刑事事件に特化した法律事務所だからこそ、数々の案件で実績を積み上げ、ノウハウ・スキルを磨き上げ続けることができます。 私たちは、「刑事事件のプロフェッショナル」として、100%依頼者のために弁護をします。
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暴力犯罪は迅速な対応が大切
スピードは、刑事弁護の命です。 弁護人による迅速な捜査対応は最終的な結果に大きな影響を与えます。 ご連絡をいただいたら、すぐに接見にいき、その時点での最善のアドバイスをお伝えします。
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暴行・傷害事件から、傷害致死や殺人にも対応
当事務所では暴行や傷害などの身近な事件から、傷害致死や殺人などの重大事件まで、多岐にわたる事件を扱ってきました。近年は少年による暴行事件も増えています。どんな案件でも、まずはお電話でご相談ください。
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どんな行為が暴行罪になりますか?
- 暴行とは、人に対する有形力の行使と表現され、人に対して物理的な力を行使するという意味です。
相手に対し、殴る・蹴る、髪を無理やり切る・無断で切る、髪や腕または体を強く引っ張る、体を強く押し当てる、大声で怒鳴りつける、水をかける等、たとえ怪我をさせていない行為でも暴行罪に問われることがあります。
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怪我の程度が重症とみなされる目安はありますか?
- ケースバイケースになりますが、刑事事件においては、一般的に加療期間が3週間以上の場合に「重症」と判断される傾向があります。 この3週間という基準は、傷害罪の罪名を決める際の目安として用いられることが多いです。ただし、この基準は絶対的なものではなく、 怪我の種類や部位、後遺症の有無なども考慮されます。そして、医師の診断書や被害の程度、加害者の故意や過失の度合いなど、総合的に判断されます。
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不注意で友人に怪我をさせてしまいました。
- 暴行罪は原則として故意犯なので、過失で成立することはありません。暴行罪が成立するためには、相手に対して意図的に暴力を振るうことの認識という「故意」が必要です。ただし、危険な場所で不注意な行動をとり、結果として他人に危害を加えた場合、「過失傷害罪」や「軽犯罪法違反」に問われる可能性があります。 結論として、暴行罪自体が過失で成立することはありませんが、状況によっては他の罪に問われる可能性があります。
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酔っ払って同僚に怪我をさせてしまいました。記憶がないのですが罪に問われますか?
- 泥酔状態でも、通常は刑事責任能力があると判断されることが多いです。そのため、泥酔状態で記憶がなくても有罪になる可能性は高いですが、起訴や刑の軽減を目指すことができます。記憶がない場合こそ、早期に弁護士のアドバイスを受けることが最適な対応や弁護戦略を立てる上で重要になります。
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暴行事件での示談金の額はどのように決まりますか?
- 暴行罪の示談金の一般的な相場は10万円から30万円程度です。ただし、これはあくまで目安であり、個々の事案によって変動します。 示談金の具体的な金額は、被害の大きさ、加害者と被害者の関係性、暴行の悪質性、物的損害の有無、被害者の要求等の要素によって変わってきます。 示談金の額は固定されたものではなく、様々な要因と交渉によって決まるため、弁護士に相談することで、適切な金額での示談成立の可能性が高まります。
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