ストーカーで逮捕されたらすぐに刑事事件専門の弁護士へ|弁護士の選び方も
令和3年5月26日にストーカー行為等の規制等に関する法律の一部を改正する法律が公布されました。改正法により、改正前よりもストーカー行為について厳しく取り締まわれるようになり、新たにGPS機器等を用いた位置情報の無承諾取得も規制されるようになりました。この記事では、どのような行為がストーカー行為に該当するのか、また、ストーカー行為によってご自身や家族が逮捕されてしまった方や、気がつかないうちにストーカー行為に発展してしまっているかもしれないと不安な方のために、ストーカー行為で逮捕されてしまった場合、どのような刑事手続きを経るのか、示談についてなどを解説いたします。
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1. ストーカーが成立する行為とは
ストーカー規制法(正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」)では、特定の人に対する恋愛感情等またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、その特定の人や家族等に対して行う以下の10項目を「つきまとい等又は位置情報無承諾取得等」と規定し、規制しています。
- つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等
相手を尾行する、行動先(通勤途中・外出先等)で待ち伏せする、進路に立ちふさがる、自宅や職場・学校等や実際にいる場所の付近での見張り・押しかけ・うろつきなどの行為。
- 監視していると告げる行為
相手の行動や服装等を電子メールや電話で告げるなどの行為。
- 面会や交際の要求
拒否しているにもかかわらず、面会や交際、復縁等、義務のないこと求めたり、贈り物を受け取るように要求するなどの行為。
- 乱暴な言動
「馬鹿野郎」など粗暴な内容のメールを送信したり、相手の家の前で、車のクラクションを鳴らしたりするなどの行為。
- 無言電話、拒否後の連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNSメッセージ・文書等
相手が拒否しているにもかかわらず、携帯電話や会社、自宅に何度も電話をかけたり、ファクシミリや電子メール・SNSメッセージ・文書等を送信したりする行為。
- 汚物等の送付
汚物や動物の死体等、嫌悪感を与えるものを相手の自宅や職場等に送り付けるなどの行為。
- 名誉を傷つける
相手を中傷したり名誉を傷付けるような内容を告げたりメールを送るなどする行為。
- 性的しゅう恥心の侵害
わいせつな写真を相手に送り付けたり、電話や手紙で、卑わいな言葉を告げ恥しめようとする行為。
- 相手方の承諾を得ないで、GPS機器等を用いて位置情報を取得する行為
相手のスマートフォン等を勝手に操作し、記録されている位置情報を画面上に表示させて盗み見たり、車両などにGPS機器等を取り付け、位置情報を受信したりする行為。
- 相手方の承諾を得ないで、GPS機器等を取り付ける行為等
相手の使用・乗車する自動車等にGPS機器等を取り付けたり、所有物にGPS機器等を差し入れたりする行為。
以上のストーカー行為は全て逮捕される対象にはなりますが、必ずしもすぐに逮捕されるわけではありません。実際は、被害者がストーカー行為を警察に届け出ても、すぐに逮捕されるケースは少なく、まず警察や都道府県公安委員会から警告や禁止命令が出されます。警告や禁止命令が出されたにもかかわらず、無視してストーカー行為を続けると、逮捕される可能性が高くなります。ただし、悪質なストーカー行為や相手の被害が深刻な場合は、警告や禁止命令なしにすぐに逮捕されてしまうこともあるので注意が必要です。
ストーカー規制法に違反してストーカー行為を行った場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。さらに、禁止命令が出ているのにもかかわらずストーカー行為をした者には、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金が科されることがあります。
なお、上記に挙げた行為でも、恋愛感情が起因していない行為(恋愛感情はないけれど、恨みや妬み、悪意をもって反復してストーカーする行為)については、都道府県の迷惑防止条例違反、ストーカー行為が常習的でない場合は、軽犯罪法違反が適用されることがあります。
2. ストーカーで逮捕された例
ストーカー行為を行って逮捕された実際の例は以下のとおりです。
【例1】元交際相手にGPSを仕掛けて逮捕
概要:30代の男性が、別れた交際相手の車にGPS機器を無断で取り付けて居場所を追跡していたとして、ストーカー規制法違反で逮捕された事例。女性が「常に見張られているようで怖い」と警察に相談して発覚しました。
ポイント:
- 物理的接近や接触はしていなくても、「位置情報を無断で取得する行為」がストーカー行為に該当し逮捕される可能性があります。
【例2】SNSでのメッセージ送信を繰り返し逮捕
概要:20代の男性が、交際を断られた女性に対し、InstagramやTwitterなど複数のSNSを通じて何度も「会いたい」「連絡が欲しい」といったメッセージを送り続けた事例。女性が警察に相談し、警告を受けていたにも関わらず、その後もメッセージ送信を続けたため、ストーカー規制法違反で逮捕されました。
ポイント:
- SNSでの繰り返しの接触も「ストーカー行為」に該当。
- 一度警告を受けた後に再度行為を繰り返すと、すぐに逮捕されるリスクが高くなります。
【例3】自宅や勤務先に何度も押しかけて逮捕
概要:40代の男性が、元同僚の女性に執拗に接近し、自宅や職場の近くに何度も現れた事例。被害者が「付きまとわれて怖い」と警察に相談。警告後も行動が止まらなかったため、ストーカー規制法違反で逮捕されました。
ポイント:
- つきまといや待ち伏せ行為は典型的なストーカー行為。
- 接近禁止命令や警告が出た後は、特に厳しく取り締まられます。
【例4】有名アイドルにしつこく接近して逮捕
概要:ファンを名乗る男性が、複数回にわたって女性アイドルの自宅周辺に現れたり、ライブ会場で話しかけようとしたりするなどの行為を繰り返した事例。警察から警告を受けたにもかかわらず、再度接近したことで逮捕されました。
ポイント:
- 芸能人や有名人に対するストーカー行為も、一般人と同様に適用されます。
- ファン心理に基づく接触でも、相手が恐怖や不快を感じれば違法となる可能性があります。
3. ストーカーで逮捕された後の流れ
ストーカー規制法における逮捕は、すぐに逮捕されるわけではなく、原則として「警告」や「禁止命令」を受けた後にも関わらず、行為を継続した場合に行われることが多いです。以下に、警告から逮捕に至るまでの流れを、実際の運用に基づいて解説します。
3-1. 被害者の相談・申告
まず、被害者が警察に対して「つきまといを受けている」「SNSでしつこく連絡がくる」「待ち伏せされて怖い」などと相談・通報します。この段階では、警察は「相談」として受け取り、被害内容を聞き取りながら、証拠収集(LINEのスクリーンショットや防犯カメラ、通話履歴など)を進めます。
3-2. 警察による警告
被害が継続し、ストーカー行為と認定されると、警察は加害者に対して「やめるように」という「警告」を出します。
この警告は、比較的迅速に出されるケースが多く、形式としては口頭や書面で「これ以上行為を続ければ違法行為となり、逮捕される可能性がある」と伝えるものです。
3-3. 公安委員会による禁止命令
警告を無視してストーカー行為を継続した場合、警察による「警告」よりより強い措置として都道府県公安委員会が「禁止命令」を出します。
これは法的効力を持つ行政命令で、「○○さんにこれ以上接触してはいけない」「SNSでの接触も禁止」など、具体的な禁止内容が記されます。禁止命令に違反すれば、それ自体が「ストーカー規制法違反」として逮捕される根拠になります。
3-4. 再度の接触・行為継続 → 逮捕
警告や禁止命令を無視して、再び接近、連絡、つきまとい等の行為を行った場合、警察は命令違反や再犯の可能性を重く見て、逮捕に踏み切ります。
3-5. 緊急性・重大性が高い場合は警告なしで即逮捕も可能
例えば以下のようなケースでは、警告や禁止命令を待たずに逮捕されることがあります:
- 被害者の自宅に無断で侵入した(住居侵入罪)
- 刃物や危険物を持って接近した(銃刀法違反)
- 身体的暴力や脅迫を伴う行為
- 被害者が命の危険を感じている場合(DVと併存していることも)
これらは刑法や他の法律に基づいて「現行犯逮捕」や「緊急逮捕」が行われることもあります。
4. ストーカーで逮捕された後の刑事手続
上述のとおり、警告や禁止命令を無視してストーカー行為を継続し、逮捕されてしまった場合、以下のとおり刑事手続が進みます。
4-1. 逮捕後の手続(48時間以内)
被疑者が逮捕されると、警察は取り調べを行い、必要な証拠を収集します。この取り調べ期間は原則として48時間以内と定められており、その間に警察は事件の概要を検察に送致(送検)するか否かを判断します。
4-2. 検察官による勾留請求(24時間以内)
警察から事件が送致されると、検察官は被疑者の勾留が必要かどうかを判断します。勾留とは、さらに取り調べや証拠収集のために身柄を拘束し続ける手続きで、検察官は送致を受けてから24時間以内に、裁判官に対して勾留請求を行うかどうかを決定します。
4-3. 裁判官による勾留決定(最大10日+延長10日)
検察官が勾留を請求すると、裁判官は被疑者本人と面会(勾留質問)し、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかなどを判断します。勾留が認められると、原則として10日間、被疑者の身柄が拘束されます。場合によってはさらに最大10日間の延長が認められることもあります(合計最大20日間)。
4-4. 起訴・不起訴の判断
勾留期間中に検察官は証拠を精査し、被疑者を起訴するか不起訴にするかを決定します。起訴とは、裁判で有罪か無罪かを争うために事件を正式に裁判所へ申し立てることです。ストーカー規制法違反は、内容により懲役刑・罰金刑が科される可能性があるため、特に悪質な場合には公判請求されることがあります。
一方、初犯で反省が見られ、被害者との示談が成立しているなどの事情がある場合は、不起訴処分となることもあります。
4-5. 起訴後の手続
起訴された場合、事件は地方裁判所または簡易裁判所に送られます。公判では、検察官が起訴状を読み上げ、被告人(起訴された者)はこれに対して認否を示します。その後、証人尋問や証拠調べなどを経て、裁判官が最終的な判決を言い渡します。
4-6. 判決確定とその後
裁判の結果、有罪判決が下されると、刑罰の執行が始まります。実刑(懲役刑など)の場合は刑務所に収監されますが執行猶予付き判決の場合は刑務所には収監されず、一定期間中に再犯がなければ刑の執行は猶予されます。
5. ストーカーで逮捕された場合示談が重要になる
ストーカー規制法においては、被害者の告訴や被害感情が処罰の判断に強く影響します。
示談が成立し、被害者が「許す」という意思を示すことで、不起訴処分になる可能性が高まり、接近禁止命令等が解除・緩和される場合もあります。また、示談によって被害者との関係改善が見られることは、反省の意思や更生の可能性があると判断され、裁判官や検察官の心証が良くなる傾向があります。これは量刑判断に直結します。
6. ストーカーを刑事事件専門の弁護士に依頼するメリット
まず、ストーカーの容疑をかけられてしまった場合、依頼できる弁護士の種類は、国選弁護人、当番弁護人、私選弁護人の3種類があります。
・私選弁護人:私選弁護人は、自分や家族がお金を払って依頼する弁護士です。自由に弁護士を選ぶことができ、自分が信頼できる弁護士に依頼できます。費用は案件によって異なりますが、着手金や成功報酬などがかかります。
・ 国選弁護人:国選弁護人は、経済的に弁護士を雇えない人のために国が選んでくれる弁護士です。被疑者が勾留された段階や、起訴後の刑事裁判の段階で、希望すれば原則として選任されます。ただし、弁護士を自分で選ぶことはできず、どんな弁護士が選ばれるのかはわかりません。
・当番弁護人:当番弁護人は、逮捕された人のために1回だけ無料で接見に来てくれる弁護士です。各地の弁護士会が担当制で行っており、警察署に呼べば、当番の日の弁護士が1回限りで来てくれます。今後の対応についての相談もでき、その弁護士にそのまま私選として正式依頼することも可能ですが、国選弁護人同様、どんな弁護士が来てくれるのかはわかりません。
弁護士といっても、その専門分野は様々です。国選弁護人や当番弁護人は、国や弁護士会からランダムで派遣されているので、ベテランか若手か、どんな弁護士が来るかはわからず、実際に刑事事件を対応したことがない弁護士が派遣されてくる場合もあります。
ストーカー規制法に違反すると、刑事事件として扱われますので、可能であれば刑事事件専門の弁護士に依頼することをお勧めします。刑事事件専門の弁護士は、単なる法律知識だけでなく、刑事事件に特化した実務経験を豊富に持っています。警察・検察の対応の流れ、逮捕・勾留の可能性、証拠収集や示談交渉の進め方など、刑事弁護の経験がない弁護士では対応しきれない細かな対応が求められる局面でも、的確に動くことができます。また、刑事事件において重要なのは、初動の早さです。特にストーカー事件では、被害者からの通報によって突然の逮捕・勾留がなされることがあり、本人も家族も混乱することが少なくありません。刑事専門の弁護士であれば、事前に警察との連絡調整や事情説明を行うことで、逮捕の回避や勾留請求の却下など、依頼者の自由を守るための交渉を迅速かつ積極的に行うことができます。また、仮に逮捕されてしまった場合でも、速やかに準抗告や勾留取消請求、保釈請求を行うなど、早期の身柄解放に向けた具体的な動きをとることが可能です。さらに、ストーカー事件では、被害者との示談が事件の帰結に大きく影響します。不起訴処分や執行猶予付き判決を得るためには、誠意を持った謝罪と、被害者の理解・納得を得ることが不可欠です。しかし、ストーカーの嫌疑をかけられた当人としては自覚がなくても、相手は「被害を受けた」と感じている場合があり、当事者同士の直接交渉はトラブルを拡大させる危険があります。そのため、専門的な第三者による介入が必要です。刑事事件専門の弁護士は、示談交渉に慣れており、被害者の感情を丁寧に扱いながら、双方にとって納得のいく合意形成を目指します。
7. 弁護を依頼した時の流れ
当事務所の弁護士に依頼をいただく場合は、以下のような流れで対応が進みます。
- 電話・メールでのご相談:まずはお電話か公式ホームページのお問合せにてご連絡ください。初回のお電話・メールでのご相談は無料となっております。少しでも不安に思われる場合は、躊躇せずご連絡ください。(緊急性の高い事案によっては、リモートで契約をさせていただき、依頼者の方が逮捕勾留されている場合は、すぐに接見に行かせていただきます。)
- 初回相談:お電話などでお伺いした事件の詳細を詳しく弁護士にご説明いただき、今後の方針を相談します。正式に受任いただける場合は必要書類にサインをいただき受任となります。
- 事実関係の調査と弁護方針の決定・示談交渉・接見:弁護士が警察や検察から情報を収集し、事件の全容を把握し、最適な弁護方針をお伝えいたします。被疑者が逮捕勾留されている場合はすぐに接見に行き、被疑者からのお話しを伺い、必要なアドバイスを伝えます。ストーカー事件においては、被害者との示談が重要になるため、依頼者に代わって示談交渉を行います。
- 捜査対応:被疑者に不利な供述調書を作られないよう、取り調べへの立ち会いを行ったり、意見書の提出など、捜査段階での対応を行い、不起訴を目指します。被疑者に対し「接見等禁止」(弁護士以外の人物と面会や手紙の授受を禁じる命令です。)が出ている場合は、「接見等禁止解除の申立て」を行い、家族や友人などに会えるよう取り計らい、不当な勾留に対しては「勾留決定の取消し」や「準抗告」を申し立てます。
- 裁判対応:起訴されてしまった場合は、裁判に向けた準備と出頭を行います。
- 処分後の対応:状況に応じて、処分決定に対する異議申立て又は取消申立て等の対応を行います。
8. ストーカーは速やかに刑事事件専門の弁護士に相談しよう
ストーカーの容疑をかけられてしまった場合、たとえ身に覚えがなかったとしても、対応を誤れば深刻な事態へと発展する可能性があります。ストーカー規制法の下では、被害者の申告だけでも警察が動くことがあり、捜査の対象となった時点で日常生活や社会的信用に大きな影響が及ぶこともあります。このような状況に陥ったとき、最も重要なのは早期に刑事事件を専門とする弁護士に相談することです。ストーカー行為は被疑者の意図に関係なく、被害者が「恐怖を感じた」と訴えることで成立してしまう可能性があるため、自覚のないまま加害者とされるケースも少なくありません。もし警察から事情聴取を受けたり、呼び出しがあった場合は、ご自身で対応するのは非常に危険です。無意識の発言が不利な証言として記録されることもあり、結果として誤解を招きやすくなります。専門の弁護士に相談すれば、聴取への対応方法や、今後の見通しについて適切なアドバイスが得られます。さらに、弁護士を通じて被害者との示談交渉を行うことで、逮捕や起訴を免れたり、処分が軽くなる可能性もあります。刑事事件に詳しい弁護士であれば、最新の法律はもちろん、過去の判例や警察の対応傾向を熟知しているので、最も有利な解決策を提案してくれます。
ストーカーの容疑をかけられてしまった場合は、冷静かつ戦略的に対応することが、ご自身の未来を守る第一歩となります。もしそのような事態に直面してしまったら、おひとりで悩まず、すぐに刑事事件を扱う弁護士へ相談しましょう。


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