痴漢で逮捕されたら刑事事件専門の弁護士へ|解決事例も
突然の逮捕、取り調べ、そして社会的な影響―痴漢で捕まると、人生が一変します。動揺し、何をすればよいのか分からないかもしれません。しかし、ここからの対応が今後を大きく左右します。痴漢の容疑を認めるか否認するか、示談を進めるべきか。この記事では、痴漢容疑をかけられている方や、ご家族が痴漢容疑で捕まってしまった方が、最善の選択をするために、どうすべきかを解説します。
1. 痴漢が成立する行為|適用される法律と刑罰
痴漢行為は、2023年7月に新設された不同意わいせつ罪もしくは都道府県の迷惑防止条例違反が適用され逮捕される場合があります。悪質性が高い場合は不同意わいせつ罪、比較的軽微な場合は迷惑防止条例違反が適用されることが多くなっています。
1-1. 不同意わいせつ罪に該当する痴漢行為の刑罰と成立要件
不同意わいせつ罪の刑罰は懲役6か月~10年で、罰金刑はありません。
被害者の同意がない状態でわいせつ行為を行った場合に成立します。以前の「強制わいせつ罪」と異なり、暴行や脅迫がなくても成立するのが特徴です。
※不同意性交罪・不同意わいせつ罪について詳しくはこちらの記事をご参照ください 。
不同意性交等、不同意わいせつで訴えられた!どうしたらいいの?
具体的に不同意わいせつ罪にあたる悪質な痴漢行為としては、以下のような例があります。
- 下着の中に手を入れて直接身体を触る行為
- 衣服の上から執拗に胸や臀部などを触りつづける行為
- 相手の手をつかんで自分の陰部を触らせる行為
- 路上で突然抱きついて身体を触る行為
- 泥酔状態や寝ている人の身体を触ったりキスをする行為
1-2. 迷惑防止条例違反に該当する痴漢行為の刑罰と成立要件
一方で痴漢行為が比較的軽微だった場合、各都道府県の迷惑防止条例違反が適用されます。たとえば東京都の迷惑防止条例では、常習でない痴漢行為の刑罰は6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金となり、不同意わいせつ罪より刑は軽くなっています。
どこまでが不同意わいせつ罪にあたり、どこまでが迷惑防止条例違反にあたるのかは事案によって様々で、総合的に判断されるため、明確な線引きはありませんが、公共の場で同意なく衣服の上から相手の身体を触ったり、衣服越しに相手に自分の陰部を当てる行為は迷惑防止条例、衣服の中に手を入れ相手の身体を直接触るといった行為は不同意わいせつ罪に問われる傾向があります。(ただし、迷惑禁止条例については、公衆に対する迷惑行為を防止する目的で都道府県ごとに設けられている条例ですので、犯行場所は公共の場所に限られます。)
2. 痴漢で逮捕された後の流れ
痴漢行為で逮捕された場合、刑事手続が進行し、最終的に不起訴となるか、起訴されて刑罰が科されるかが決まります。
2-1. 逮捕
逮捕の形態には、現行犯逮捕と通常逮捕の二種類があります。現行犯逮捕は、その場で被害者や目撃者に取り押さえられ、警察に引き渡されるケースであり、電車で痴漢行為を行った場合などは駅員室などに連行された後、警察官が到着すると警察署へと移送されます。一方、通常逮捕の場合は、防犯カメラの映像や目撃証言をもとに警察が捜査を進め、十分な証拠がそろった段階で裁判所の逮捕状に基づき逮捕されます。
2-2. 取り調べ(最大48時間以内)
逮捕後、被疑者は警察署に連行され、警察官から取り調べを受けることになります。この取り調べは最大48時間以内に行われ、供述調書が作成されます。取り調べの際には、警察が証拠品としてスマートフォンや所持品を押収することもあり、逮捕後すぐには被疑者が家族や友人と会うことができません。ただし、被疑者には弁護士と面会することができる権利が保障されています。
逮捕されて取り調べを受ける際には、身体的にも心理的にも計り知れないプレッシャーがかかります。被疑者の供述内容は、その後の処分に大きな影響を与えるため、逮捕後すぐに弁護士を呼び、弁護士は、黙秘権を行使するタイミングや供述内容について適切に助言し、不利な証言を強要されることを防ぎます。「やってない」と思う場合は、絶対に安易に認めてはなりません。痴漢事件で逮捕された場合は、弁護士が来るまでは黙秘を貫き、捜査機関からの書類に対して押印などはせず、携帯電話のロックの解除を求められても応じないようにしましょう。
2-3. 検察へ送致(逮捕から48時間以内)
警察は逮捕後48時間以内に事件を検察へ送致(送検)するかを決定します。送検されると、検察官が勾留を請求するか、釈放するかを判断することになります。送検後、検察官は被疑者の身柄をさらに拘束するかどうかを決め、証拠が不十分である場合や示談が成立している場合には、釈放されることもあります。しかし、逃亡や証拠隠滅の恐れがあると判断されると、裁判所が勾留を決定し、この勾留期間はまず10日間とされていますが、必要に応じてさらに10日間の延長が可能であり、最大20日間の身柄拘束が行われる場合があります。
弁護士に依頼しておくと、不当な勾留に対しては不服を申し立て、被害者と示談の必要がある場合は示談交渉を行います。示談が成立すれば、不起訴となる可能性が高まり、前科がつかずに済むケースもあるため、早期の対応が求められます。また、弁護士は被疑者の無罪を主張するための証拠を収集します。これは、取り調べ中に提出された証拠が適法であるか、証拠が不利なものでないかを確認する作業も含まれ、検察が集めた証拠の信憑性を検討し、不当な証拠や違法に収集された証拠がないか精査します。後述のように、痴漢事件において示談は強力な意味を持ちますので、示談交渉に強みをもつ刑事事件専門の弁護士への依頼がおすすめです。
2-4. 起訴 or 不起訴の判断
検察官は勾留期間内に、被疑者を起訴するか不起訴とするかの判断を下します。不起訴となるケースとしては、証拠不十分、示談成立、微罪処分などが考えられ、不起訴となれば、前科がつかず、刑事手続は終了します。
しかし、略式起訴が行われた場合は、罰金刑(10万~50万円程度)が科されることになります。これは前科がつくものの、正式な裁判は行われず、比較的軽い処分となります。
起訴されてしまった場合は、公開での裁判で処遇が決まります。
2-5. 刑事裁判
裁判では、適用される法律と刑罰が決定されます。
刑事裁判の結果、実刑となるか、執行猶予がつくかは、被疑者の行為の悪質性や過去の犯罪歴などによって総合的に判断されます。初犯で軽微な場合は執行猶予が付与される可能性が高いですが、再犯や悪質なケースでは、実刑判決となり刑務所に収監されることもあります。
少し前の映画やテレビドラマなどで「日本の刑事裁判の有罪率は99.9%」といわれますが、あきらめてはいけません。徹底的な証拠収集と立証で無罪を勝ち取った事案もありますので、早期に刑事事件に強い弁護士に依頼しましょう。
3. 痴漢で逮捕された場合は示談が重要になる
痴漢行為をして逮捕されてしまった場合、被害者との示談の成立は、不起訴を獲得する上でも有利に働きます。示談とは、当事者(もしくはその代理人)が話し合いを行い、一定の合意に至ることで事件を解決する方法です。
刑事事件においては示談が成立することで、刑事処分の軽減や不起訴処分の可能性が高まるため、示談は非常に重要な意味を持ちます。そのため、示談によって被害者の納得を得ることができれば、告訴の取り下げにつながり、結果として不起訴処分となる可能性が高くなります。
仮に起訴された場合でも、示談が成立していることで刑罰が軽減される可能性があります。裁判になった場合、裁判官は示談の有無を考慮して量刑を判断します。示談が成立し、被害者が「加害者を許した」という意思を示すと、執行猶予付きの判決や罰金刑など、より軽い処分が下されることがあります。
また、示談交渉を行うことで、社会的な影響を最小限に抑えることができます。痴漢事件で逮捕されると、家庭や社会生活に深刻な影響を及ぼすことがあります。しかし、示談が成立し、不起訴処分となれば、前科がつかず、職場復帰や社会的信用の回復も比較的容易になります。特に、報道される可能性がある場合、示談によって早期解決を図ることは重要です。
ただし、示談交渉を進める際には、慎重に対応しなければなりません。被害者との直接交渉はトラブルを招く可能性があるため、弁護士を通じて行うのが一般的です。示談金の適正な金額や合意の条件を専門的な視点で判断してもらうことで、不利な条件で合意してしまうリスクを避けることができます。
痴漢事件で逮捕されてしまった場合、迅速かつ適切な対応が求められます。早い段階で弁護士に相談し、示談交渉を進めることで、刑事処分を回避し、逮捕の事実による社会的影響を最小限に抑えることができます。
刑事弁護専門の弁護士は、被害者との示談についても、交渉のタイミングや適切な示談金額を熟知しているので、速やかに示談交渉を行うことができます。
一方で、痴漢の冤罪に巻き込まれた場合、つまり否認事件の場合は、示談をするかどうかは特に慎重に考える必要があります。上記のとおり、通常示談は事件を早期に解決し、刑事処分を軽減する手段として有効ですが、冤罪の場合は別の側面もあります。当事務所では実際に痴漢の冤罪事件で、示談をせずに裁判で戦い、無罪判決を勝ち取った事例もあります。示談をするかどうかは、依頼者のお話をきちんと伺った上で、依頼者にとってベストな結果を残すことが弁護士の役割です。
4. 痴漢に強いのは刑事事件専門の弁護士
痴漢で逮捕された場合、自分の弁護を担当する弁護士を選ぶことができます。弁護人の種類には大きく分けて 「国選弁護人」「当番弁護人」「私選弁護人」 の3つがあります。それぞれの制度には特徴があり、選択肢によって費用や利用条件が異なります。
4-1. 国選弁護人とは
国選弁護人は、国が弁護士費用を負担する制度です。経済的に弁護士を依頼できない被疑者・被告人に対し、公平な裁判を受ける権利を保障するために設けられていますが、誰でも利用できるわけではなく、起訴前段階では、罪の重さが 死刑・無期懲役・長期3年以上の懲役・禁錮 に当たる場合かつ、流動資産が50万円未満の場合に限られます。通常の痴漢事件は、迷惑防止条例違反として処理されるため、起訴前段階での国選弁護人制度の利用は困難です。
また、国選弁護人はランダムで派遣されてくるので、ベテラン若手、どんな専門分野を持った弁護士がくるかはわかりません。
4-2. 当番弁護人とは
当番弁護人は、各都道府県の弁護士会が運営する制度で、逮捕された被疑者が最初に1度だけ無料で弁護士と接見できる制度です。起訴後の事件や勾留中の事件を除いて、基本的に逮捕された場合に利用できるのが特徴です。警察に逮捕された後、警察署で「当番弁護人を呼んでください」と希望を伝えると、弁護士会から弁護士が派遣されますが、2回目以降も依頼したい場合は、国選弁護人を申請するか、私選弁護人として契約するかを選ぶことになります。
当番弁護人も、国選弁護人同様、ランダムで派遣されてくるので、ベテラン若手、どんな専門分野を持った弁護士がくるかはわかりません。
4-3. 私選弁護人とは
私選弁護人は、被疑者やその家族が自分で選び、費用を支払って雇う弁護士のことです。自由に弁護士を選ぶことができるため、自分が信頼できる弁護士に依頼できます。
弁護士費用は自己負担となりますが、逮捕直後から、本人の家族や知人が依頼することも可能です。また、弁護士を自由に選べるため、刑事事件の経験が豊富な弁護士に、戦略的な弁護をしてもらうことができます。
また、弁護士といっても民事・刑事・企業法務・相続など、その分野は様々です。痴漢は刑事事件にもあたりますので、刑事事件に特化した弁護士に依頼することが大切です。
ホームページ上に「刑事事件」を取り扱い分野に入れていても、刑事事件の経験が豊富とは限りません。解決事例や実績はもちろん、実際に会って話をしてみて、信頼できる刑事弁護の専門家を見つけることが大切です。
5. 弁護を依頼した時の流れ
ご自身やご家族が痴漢で逮捕されてしまった場合、当事務所の弁護士に依頼した場合、以下のような流れで対応が進みます。
- 電話・メール相談:まずはお電話か公式ホームページのお問合せにてご連絡ください。初回のお電話・メールでのご相談は無料となっております。(緊急性の高い事案によっては、リモートで契約をさせていただき、すぐに接見に行かせていただく場合もございます。)
- 初回相談:お電話などでお伺いした事件の詳細をさらに詳しく弁護士にご説明いただき、今後の方針を相談します。正式に受任いただける場合は必要書類にサインをいただき受任となります。
- 事実関係の調査と弁護方針の決定・接見:弁護士が警察や検察から情報を収集し、事件の全容を把握し、最適な弁護方針をお伝えいたします。被疑者が逮捕勾留されている場合はすぐに接見に行き、被疑者からのお話しを伺い、必要なアドバイスを伝えます。
- 捜査対応:被疑者に不利な供述調書を作られないよう、取り調べへの立ち会いを行ったり、意見書の提出など、捜査段階での対応を行い、不起訴を目指します。被疑者に対し「接見禁止」が出ている場合は、「接見禁止解除の申立て」を行い、家族や友人などに会えるよう取り計らい、不当な勾留に対しては「勾留決定の取消し」や「準抗告」を申し立てます。
- 裁判対応:起訴されてしまった場合は、裁判に向けた準備と出頭を行います。
- 処分後の対応:状況に応じて、処分決定に対する異議申立て又は取消申立て等の対応を行います。
6. 痴漢の解決事例
当事務所では痴漢の冤罪事件をはじめ、様々な性犯罪の案件を扱ってきました。以下はその一例です。
【痴漢冤罪】徹底した弾劾と弁護側立証で、無罪判決
電車内で、犯人と間違われて逮捕された事件です。 起訴前から知り合いの弁護士が弁護人を務めていて、弁護方針についてアドバイスをしていました。残念ながら起訴されてしまいましたので、裁判段階からご依頼を受けて弁護人になりました。
裁判では、検察官の立証が尽くされていないことや「被害者」と語る女性の証言の問題点を明らかにしました。DNA鑑定の専門家の証人尋問など、弁護側もできる限りの立証を尽くした結果、裁判所は、「痴漢」は女性の思い込みによる可能性を排除できないと判断して、無罪判決が下されました。
【痴漢】長期間経過していたものの、示談を成立させることができた事案
依頼者は痴漢事件をしたとして捜査を受けていましたが、ご本人は被疑事実を否認していました。そのため、示談をすることなくご本人で捜査対応をしていました。
しかし、将来的に逮捕されるのではないかという不安や、1人で捜査対応をしていくことの限界を感じていらっしゃいました。事件を早く終わらせたいというご本人の希望も踏まえ、事件は否認しつつも解決金を相手方に支払うことで示談を成立させようということになりました。出来事が起きた日から相当長期間が経過しており、被害感情も高かったことから示談交渉は難航しましたが、最終的に示談を成立させることができ、不起訴処分を得ることができました。
7. 痴漢は早めに刑事事件専門の弁護士に相談しよう
痴漢事件に巻き込まれると、人生が一変する可能性があります。
無実であるにもかかわらず逮捕されてしまった場合、逮捕された時点で社会的な制裁を受けてしまうことも少なくありません。そのため、痴漢の疑いをかけられたら、早めに刑事事件に強い弁護士に相談することが重要です。
痴漢の疑いをかけられたときは、被害者の証言が大きな影響を持ちます。目撃者がいない場合でも、被害者の供述が証拠とされ、加害者として扱われることがあります。そのため、警察の取り調べにおいて「身に覚えがない」と主張しても、証言の食い違いがあるだけで不利な状況に追い込まれることがあり、強引な自白の誘導や長時間の取り調べによって、誤った供述をしてしまうケースも少なくありません。このような状況を避けるためにも、早い段階で弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。
痴漢事件では、早期の対応が結果を大きく左右します。弁護士が介入することで、不当な取り調べを防ぎ、被疑者の権利を守ることができます。さらに、証拠収集や証言の整理を行い、無実を証明するための準備を迅速に進めることが可能になります。弁護士が早期に関与することで、不起訴処分を得られる可能性が高まり、裁判に進むリスクを低減できます。
出来心から痴漢をしてしまった場合でも、痴漢事件においては、「示談」が重要な要素となる場合があります。被害者との示談が成立すれば、刑事処分を避けられる可能性が高まります。ただし、示談交渉は慎重に進める必要があり、弁護士のサポートなしに行うと、かえって不利な条件を受け入れてしまうこともあります。経験豊富な弁護士の助言を受けながら進めることで、より良い解決を目指せます。
万が一、痴漢の疑いをかけられた場合、慌てずに冷静に対応することが重要です。決して警察の誘導に流されず、「弁護士を呼んでください」と主張しましょう。そして、"早めに”、刑事事件に強い弁護士に相談し、法的アドバイスを受けることが、ご自身の人生を守るための最善の方法です。


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