不同意性交等、不同意わいせつで訴えられた!どうしたらいいの?

昨今ワイドショーでも話題になっている不同意性交等罪ですが、同意のうえで性交等をしたにも関わらず、あとから同意がなかったとして訴えられるケースが多発しています。今回は、2023年7月の法改正による影響と、同意がなかったと訴えられた場合にどうしたらよいのか、示談金目的で訴えられた場合についても解説いたします。

性犯罪|取扱業務

目次

1. 不同意性交等・不同意わいせつとは

以下の①または②によって、性交等をした場合は不同意性交等罪(5年以上の懲役刑)が成立し、わいせつな行為をした場合は不同意わいせつ罪(6月以上10年以下の懲役刑)が成立します。

※性交等には、性交・肛門性交、口腔性交のほか、膣や肛門に陰茎以外の身体の一部や物を挿入する行為も含まれます。わいせつ罪は、具体的には無理やり抱きしめる、キスをする、乳房を揉む、陰部や臀部に触れる、洋服を脱がせるなどの行為が含まれます。

①「一定の理由」を原因として同意しない意思を形成、表明または全うすることが困難な状態にさせること(性的行為をするかどうかを考えたり、決めたりするきっかけや能力が不足していて、性的行為をしない、したくないという意思を持つこと自体が難しい状態)、あるいは相手がそのような状態にあることに乗じること

「一定の理由」とは、以下の8つの行為に分けられます。

  1.  暴行、もしくは脅迫すること、または暴行や脅迫を受けたこと:「暴行」とは、人の身体に向けられた不法な有形力の行使をいい、「脅迫」とは、他人を畏怖させるような害悪の告知をいいます。
  2. 心身の障害を発生させる、または心身の障害があること: 「心身の障害」とは、身体障害、知的障害、発達障害及び精神障害であり、一時的なものを含みます。
  3. アルコールもしくは薬物を摂取させること、またはそれらの影響があること:「アルコール若しくは薬物」の「摂取」とは、飲酒や、薬物の投与・服用のことをいいます。
  4. 睡眠その他、意識がはっきりしない状態にさせること、またはその状態にあること: 「睡眠」とは、眠っていて意識が失われている状態をいい、「その他の意識が明瞭でない状態」とは、例えば、意識がもうろうとしているような、睡眠以外の原因で意識がはっきりしない状態をいいます。
  5. 同意しないという意思を伝える時間を与えないこと(不意打ち):性的行為がされようとしていることに気付いてから、性的行為がされるまでの間に、その性的行為について自由な意思決定をするための時間のゆとりがないことをいいます。
  6. 予想と違う事態に直面させて怖がらせ、もしくは驚かせること、または予想と違う事態に直面して、怖がったり、驚いていること:いわゆるフリーズの状態、つまり、予想外の又は予想を超える事態に直面したことから、自分の身に危害が加わると考え、極度に不安になったり、強く動揺して平静を失った状態をいいます。
  7. 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること:「虐待に起因する心理的反応」とは、虐待を受けたことによる、それを通常の出来事として受け入れたり、抵抗しても無駄だと考える心理状態や、虐待を目の当たりにしたことによる、恐怖心を抱いている状態などをいいます。
  8. 相手の経済的又は社会的地位に基づく影響力によって、断った場合に受ける不利益をほのめかすこと、または、相手がほのめかさなくても本人が断ったら不利益を被るかもと思っていること:金銭その他の財産に関する関係や、家庭・会社・学校など社会生活における関係において、弱い立場にある者が要求を拒否することで、自らやその親族等に不利益が及ぶことを不安に思う状態などをいいます。

②わいせつな行為でないと誤信させたり、人違いをさせること、または相手がそのような誤信をしていることに乗じること

に当たらない場合でも、

③相手が13歳未満の子どもである場合、また相手が13歳以上16歳未満の子どもで、行為者が5歳以上年長である場合にも、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪が成立します。(一部法務省HPより抜粋。)

2. 不同意性交等罪・不同意わいせつ罪が成立する可能性のある状況

改正前の法律では、暴行や脅迫があるかどうかが犯罪の成立要件とされていましたが、改正後は「暴行・脅迫」だけでなく「同意の有無」に重点が置かれました。これにより、たとえ暴力や脅迫がなかったとしても、相手が同意していなければ犯罪と認定されやすくなります。

つまりは、暴行・脅迫・薬物などのいかにも犯罪になりそうなケースでなくても、相手に同意がない性行為は犯罪になる可能性があるということです。改正法により以下のような状況でも、不同意性交罪等に問われる可能性があります。

  • 出会い系サイトで出会ったばかりの相手と半ば無理やりに性行為をした
  • お酒を飲んで泥酔した相手をホテルに連れ込み性行為をした
  • 寝ぼけていて意識が朦朧としている相手と性行為をした

今回の法改正は、被害者保護の観点から、被害者が抵抗できなかった理由や状況に柔軟に対応し、被害者の意志を重視していますが、同時に、冤罪のリスクを高めていることは事実です。例えば、「お酒を飲んで同意のうえで性交等に及んだ相手から、後から被害届を出されて逮捕された」というご相談事例も多くなっています。

また、今回の法改正により、自分の行為が不同意性交等罪にあたるのか不安に感じている、性交等をした相手に、後から「同意をしていない」と主張されてトラブルになっている方などもいらっしゃることでしょう。そのような場合は、どのように対応したらよいのでしょうか。

3. 同意があると思っていた相手に訴えられた場合どうしたらいいのか

マッチングアプリの普及などで、初めて会ったばかりの相手と性交渉をし、あとから同意がなかったと訴えられたり、相手から誘われて性交渉をしたのに、あとから同意がないと訴えられ示談金を請求される場合(いわゆる美人局)も増えています。中には腹いせや、もともと同意はあったが相手のパートナーに性行為がばれ、パートナーとの関係性を保つために「同意はなかった」と訴えてくる人もいるので、軽はずみな性行為は注意が必要です。

それではどのように対応をしたらよかったのでしょうか。性行為をする前に同意を確認し、書面や音声でいちいち証明を残しておくのは、現実的ではないですし、そもそも性行為をするかは暗黙の了解で行われるのが通常です。

したがって、行為者と相手しか存在しない密室での性交等については、同意の存在を証明するのは非常に困難です。もし、同意があると思っていた相手に訴えられてしまった場合は、以下の点に注意した上で、弁護士に相談することをお勧めします。

  1. 冷静に対応し、すぐに事実確認を行う:訴えの内容や状況について、可能な限り客観的に把握し、相手との会話内容ややり取りを整理します。できるだけ事実を記憶しているうちに詳細に記録し、証拠が残っている場合は保存しておきます。
  2. 証拠を収集・保存する:同意があったことを示すメッセージでのやり取り、当時の様子がわかる写真や映像があれば確保しておきます。また、日付や具体的な言動、行動の状況について記録することが有効です。
  3. 相手に直接連絡しない: 訴えられたことで動揺し、相手に直接連絡したくなることもありますが、これは慎重に避けるべきです。直接の連絡が証拠として使われる可能性があるため、冷静に対処するためにも、弁護士を通じての対応が望ましいです。
  4. 第三者証言や関係者に相談する: 当時の様子について知っている共通の知人がいれば、彼らの証言が証拠となる可能性があります。ただし、証言の収集は慎重に行い、必ず弁護士の指導を仰ぐことを推奨します。

4. 同意があったことを証明するための証拠

同意があったことを証明するための証拠としては、以下のようなものが考えられます。ただし、これらの証拠も必ずしも絶対的なものではなく、状況や文脈によって異なる判断がなされることもあります。

  1. 合意を示すメッセージややり取り:両者で事前に交わされたテキストメッセージやSNSでのやり取りなど、同意や合意が含まれる明確なメッセージがある場合です。ただし、これも同意が変わった可能性があるため、他の証拠とあわせて判断されることが多いです。
  2. 動画や音声記録:双方が同意のもとで録音や録画されている場合、合意の証拠とみなされることがあります。特に、行為中の同意が確認できるような発言や態度が記録されていると証拠として扱われることがあります。
  3. 性行為後のやり取り:性行為後に被害者が特に拒否や異議を示していない場合や、友好的なやり取りが続いている場合も、同意があったと評価されることがあります。ただし、この場合も慎重に判断されます。
  4. 同意を得るための事前の取り決めや契約:同意の確認として文書や合意書(たとえば、双方の同意を確認するための書面やアプリの同意確認)を交わしている場合も、証拠の一つとなることがあります。ただし、前述のとおり性行為に対して合意書を交わすことは現実的でないですし、実際の状況で意思が変わった場合もあるため、十分な証拠にはなりにくいです。
  5. 現場での行動や言動: 行為中に被害者が拒否や抵抗を示さず、むしろ積極的な態度を取っていた場合、その状況が同意の証拠となることがあります。ただし、脅迫や心理的な圧力があった場合には、真の同意とはみなされない可能性もあります。
  6. 第三者の証言:両者の間柄を知る第三者や、性行為の現場や前後に居合わせた状況を知る第三者の証言が証拠となる可能性もあります。

上記の証拠の収集・証明はご本人のみで行うことは困難ですし、慎重に行う必要があります。もし、同意があると思っていた相手に訴えられ、トラブルになってしまった場合、もしくは相手に被害届を出せれて逮捕されてしまった場合は、直ちに弁護士に相談をしましょう。

5. 不同意性交等が疑われる場合、弁護士を呼ぶメリット

前述のとおり、不同意性交等で訴えられてしまった場合や逮捕された場合は、弁護士に相談するべきです。弁護士に相談することで、以下のメリットが得られます。

  1. 適切な法的アドバイスが得られる: 弁護士は当事者がどのように対処すべきかを法的根拠に基づいてアドバイスしてくれます。どの証拠が有効で、どのように証拠を提示すべきかの戦略も立ててくれるため、適切な対応ができます。
  2. 証拠保全の指導が受けられる: 密室でのやりとりいて、証拠の収集は困難と思われますが、弁護士、とくに刑事弁護士は、法的に重要とされる証拠の収集や保全方法について熟知しています。行為前後の街中の防犯カメラの映像やGPS記録、第三者の証言などをもとに、後々の裁判や交渉で有利になる証拠を確実に残せるようサポートしてくれます。また、不要な証拠が不利に働かないようにも注意をはらってくれます。
  3. 警察や検察による捜査への対応 :刑事事件に発展した場合、警察や検察との対応が必要になりますが、弁護士がいることで、最大限の防御が可能になります。弁護士が対応することで、本来行使すべき権利を行使し、捜査機関による虚偽自白の強要や黙秘権侵害に対して毅然とした態度を貫くことができます。また、場合によっては供述調書への署名押印を拒否するなどして、取り調べで依頼者に不利な供述調書を作成させないようにします。
  4. 無用な接触や誤解を避けるための交渉代行 :弁護士が間に入ることで、「被害者」とのやり取りも冷静に進められ、感情的なトラブルやさらなる誤解を避けることができます。警察は、加害者とされる方と「被害者」との直接的な接触を嫌います。直接交渉を申し込んでも、連絡先を教えてくれないことも多いでしょう。他方で、弁護士にであれば「被害者」の連絡先を教え、相手方との交渉を促してくれることもあります。事件の性質や内容に応じて様々な示談交渉があり得ますが、示談を成立させることで逮捕や起訴を避けることができることもよくあります。

このように、弁護士がいることで法的に有利に進められ、証拠の保全や適切な対応をするための強力な味方となります。

6. 不同意性交等で逮捕された場合、どのような弁護士を呼べばいいのか

不同意性交等で逮捕された場合、もしくは相手から示談金を請求された場合などは、刑事弁護専門の法律事務所を探し、刑事事件に精通した弁護士に依頼すると良いでしょう。弁護士といっても、「民事」「刑事」「相続」「税務」など、それぞれ得意分野があります。民亊事件については民事の弁護士、刑事事件については刑事事件専門の弁護士に依頼すべきです。不同意性交等罪は2024年7月に施行された比較的新しい法律ですが、刑事弁護士であれば、常に改正法についての知識をアップデートしていますし、裁判例や解決方法を熟知しているので、その時点で依頼者にとって最適なアドバイスをもらうことができます。

7. 不同意性交等罪|法改正による冤罪のリスク

2024年7月に施行された改正法により、「不同意性交等罪」「不同意わいせつ罪」が新設され、被害者の保護が強化された一方、被疑者の冤罪のリスクの増加が気になります。不同意性交等罪は、被害者が「同意していない」という主張が立証の核となるため、従来の強制性交等罪に比べて、加害者とされる人が無実であることを明確に証明することが難しくなります。この「同意していない」ことの立証が難しいケースでは、被害者の証言が大きな比重を占めることになり、被害者の意見がそのまま裁判の進展に影響を及ぼす可能性がある一方で、証拠の欠如や曖昧な状況証拠に基づいて冤罪が生じやすくなるリスクが指摘されています。弁護士が適切に証拠収集や依頼者の供述整理、捜査の適正性確認を行い、事実に基づいた弁護活動を行うことが重要です。また、客観的証拠の収集と被害者の供述精査を通じて、依頼者が不当な起訴や有罪判決を受けないよう、慎重かつ多角的な弁護が求められます。

8. 不同意性交等で逮捕された場合、刑事弁護専門の弁護士に依頼しよう

不同意性交等で逮捕されてしまった場合、またはご自身の行動が不同意性交等にあたるのではないかと不安に思っている方は、すぐに刑事弁護専門の弁護士に依頼しましょう。当事務所では、不同意性交等・不同意わいせつを含む様々な性犯罪案件を扱ってきました。早期に適切な対応をとることで、最悪の事態を回避できる可能性があります。一人で抱え込まずに、まずはお問合せください。

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